イントロダクション

維新派と今年の会場である平城宮跡の縁は、20年以上前に、主宰の松本雄吉が、知人からこの場所を紹介されたことに始まります。

当時の平城京は、大極殿や朱雀門の復原工事が始まっておらず、見渡す限りの広大な野原で、すぐに気に入った松本はそこで一晩酒を飲み明かし、いつかここで維新派の公演をやりたいと思ったそうです。その後、2007年に上演した「nostalgia」のポスター撮影を平城宮跡で行い、同年には、平城遷都1300年祭に出演しました。出演した役者たちは「独特の場所の気を感じた」「日本語が一番似合うところ」「遺跡の上で演っていると思うと体が震えた」「空の広さが気持ちよかった」といった想いや感想をそれぞれ抱きました。同時に、見に来られたお客さんにも、維新派の作品だけでなく、平城宮跡の広大さと史跡内を歩く楽しみも十分に味わってもらえたようです。

これまでも、維新派単独で平城宮跡での公演の可能性を探ってはいましたが、なかなか公演の許可はおりず、2016年になって、東アジア文化都市が奈良で開催されるにあたり、招請を受け、関係者の皆様のご尽力により、平城宮跡での公演が実現する運びとなりました。

 


平城宮跡は、東に御蓋山、若草山、笠置山地、西には生駒山、北に平城山丘陵と古墳群、南には飛鳥が開ける地形的、歴史的にも魅力のある場所です。 平安京とは違い、この地に立つだけで、朝日が昇る東の御蓋山の向こうには柳生を越えて伊勢へと続く道があり、生駒山に沈む夕日を追えば大阪湾から瀬戸内海の海の道を経てシルクロードへと思いが膨らみます。北の平城山丘陵を走る電車は長岡京、平安京へと至り、山並みの遠くにかすむ南を望めば飛鳥からさらに吉野、熊野までの奥深い風景を見ることの幸せを感じます。 その場所の一点に立つだけで、その四方に展開する地理が歴史を呼び起こしてくれるところ、まさに身体に空間の広がりと時間の深遠を強く認識させる場所、それが平城宮跡だと思います。

松本雄吉


 

私たちがこの地で上演する『アマハラ』は、2010年に、20世紀三部作のアジア篇として上演した『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』を再構成した作品です。劇場プランや演出だけでなく、台本も改訂し、日本とアジアの国々をつなぐ、島から島へ、島づたいに続く“海の道“を辿った人々を、史実を織り交ぜながら描きます。なお、『アマハラ』は2017年に海外での公演の可能性はございますが、本作を最後の作品といたします。維新派の最終公演にぜひお立ち会いください。

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