維新派BLOG

稽古場へ

昨日は忘年会でした。

維新派にとっては最後の忘年会。
そして、会の終わりにカナさんも言ってたけど、稽古場でできる最後の馬鹿騒ぎ。
維新派メンバーに、おなじみのスタッフさんや関係者の方々、台湾のフェスティバルスタッフのイックンさんも、私たちの稽古場に集まってくれたのでした。

 

私が初めてこの稽古場に足を踏み入れたのは2012年『夕顔のはなしろきゆふぐれ』エキストラオーディションでした。
夜行バスで朝早く大阪に着き、取り敢えず大阪城まで行って公園内をぐるりとし、森ノ宮の駅前のうどん屋でクタクタのうどんをすすってから「よっしゃ!」っと稽古場へ。

 

深江橋の駅で降りパチンコ屋の前の階段から地上に出て、Googleマップを眺めながらテクテクと歩く。
カフェ・ジャックアンドベティ、曲がり角のタコ焼き屋、窓ガラスの中にずらりと植物が並ぶ何かの工場。
稽古場は、どんなところなのだろう。
ビルの一室か、どっかの地下か。
少し黄ばんだ、無機質なビルを思い浮かべる。
川に突き当たって、橋を渡る。
「これが大阪の川…」淀んだ川を眺める。小さな橋がいくつもかかっている。
ガラクタと、植物に侵食された門の家、オートバイ屋、サン美術と書かれた看板を左に曲がる。
一つ向こうのブロックの、タイヤ屋さんの隣、高く積まれたタイヤの横でタバコを吸っているおっちゃんがいる。見たことある顔。松本さんだ。
松本さんに促されて入る稽古場は、どう見ても普通の民家で、引き戸をくぐると広めの玄関のすぐ横に階段、二階へ上がると細い廊下、障子、その向こうにひらけた空間がある。大きな窓と、朽ちかけたようなベランダがあって、柔らかい光が差し込んでいる。木の柱と、漆喰の壁。
着替えのために三階に案内される。風が吹くとカロコロと音のなる竹製の風鈴、どこへ繋がってるかわからない謎の扉、こんなに細くて良いのか!と驚くほど狭い階段、踊り場の小窓、オレンジ色の電気、登りきった三階は二間から成っていて二つの窓に挟まれて明るい。衣装っぽい何かが入ったプラケースの山、木の机、関西弁のイントネーション。

初めて来た日、その稽古場の空間が、建物が、川が、街が、維新派と、松本さんの人柄を表しているように思えて、とても興奮して、ワクワクしたのを覚えています。 それから五年とちょっと、劇団員として関わらせてもらいました。
ここで松本さんと劇団員と話をしたりお酒を飲んだり小道具作ったり、もちろん稽古もしたり。
この稽古場の床には半間ごとの碁盤状のバミリが貼ってあって、それを使って私たちは色々な場所を出現させた。
時には縮尺で、時には実寸で。(そして実際の野外舞台とのギャップに何度も打ちのめされた)
稽古場全面を使った大きな正方形の周りをひたすらぐるぐる走り回ったり、小さな四角形に対して2人で向き合ったり、全員で何故かひたすら大縄を練習し続けたこともあった。

 

「稽古場狭すぎるわ」と何度も思ったし、実際に口に出しもしたけど、ここはいつでも私たちと実際の現場を繋いでくれる場所だったし、いつでも穏やかだったし、いつでも松本さんのまなざしがそこにあった。
この稽古場が好きでした。
さよなら稽古場。
ありがとう。

またいつか。

(石原菜々子)