―むぎわらの ひさしのかげの 白昼夢― 「空の明るさと地上のそれとが同じになる頃少年は決まって神隠しにあう」と云ったのは確か江戸川乱歩だ。少年は神の國に通じる秘密のトンネルを心の無垢に持っていて、常にあの世からの誘惑に心ふるえている。 常に少年を主人公に言霊の宇宙的エコーを現代オペラとして表現してきた維新派が、南紀熊野の大斎原旧社地のまさに天と地の境界に黄泉の世界と交信する少年たちの秘めやかな遊戯を取り行なう。地の底の音を聞き、花と語り、虫や鳥たちと戯れ、天へ歌いかける少年たちの遊戯はひょっとして<現代音楽>と呼ぶに相応しいのかもしれない。
「南紀熊野体験博」の一環として、熊野本宮大社跡地にて上演。緑濃い聖地での神降ろしの儀式、「ヂャンヂャン☆神楽」と名づけた。夕暮れ薄暮の中ではじまり、帰り道は闇を照らす提灯に導かれて参道を後にする。
作・演出 | 松本雄吉 |
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音楽 | 内橋和久 |
美術 | 古時計 |
照明 | 柿嵜清和 |
音響 | 松村和幸 |
舞台監督 | 大田和司 |
石本由美・平野舞・小山加油・大駕直央・ぽんず・江口佳子 春口智美・とりいまり・エレコ中西・石黒陽子・坂しおり・大西千晶 岩村吉純・近藤和見・田辺泰志・平居孝幸・真嶋淳太 西山浩史・升田学・松村紫雲・鮫島さとし 藤木太郎・田中慎也・新田ヒロユキ・大岸孝行 |
日程/1999年7月17日、18日
場所/和歌山・熊野本宮大社跡
主催/南紀熊野体験博
動員/2000人
舞台から飛び立った少年たちは、木々の間を飛行しながら森の奥へと消えていく…それはまるで依童に憑いた神が去る姿をみるような、不思議な感覚が残るシーンだった。大規模な舞台装置こそなかったが、熊野の自然と霊気をまるごと取りこんだ舞台には、文字通り「神懸かり」的なパワーがあった。(演劇ぶっく・吉永美和子氏)